重機人間ユンボル総括

またの名を反省会。
読者の方の反省は……アンケート葉書を出さなかったことに尽きますか。
10週で突き抜けるなんて微塵も思わなかったからなぁ。
ベテランゆえの優遇とかじゃなくて、純粋に面白かったから。




では何故、ユンボルは受けなかったのかを考えてみましょう。

1.キャラクター
週刊少年誌に連載されている漫画にとって、キャラクターは漫画の顔です。
キャラクターに人気が出れば連載は長期化しますし、例え話の筋がグダグダになっても
「このキャラの活躍が見たい」という欲求は漫画を見る、応援する原動力になりえます。

キャラクターは少年(小学生と中高生ではまた好むキャラクターは異なりますが)、いい年した大人、そして女性読者……およそ漫画を読む全ての人に対して有効なアピールです。
(それぞれ好むキャラの傾向は異なりますが)
さて、重機人間ユンボルの主な登場人物は、
○バル・クロウ(中年→5歳児)
○ニッパー・トーラス(無職)
○リベッタ姫(ドS)
○ゲンバー大王(現場主義)
○Dr.ドカルト(博士番長)
あたりです。
まずバルですが、小学生にも中高生にも、オヤジや5歳児は受けない!
小中高生にとっての中年とは、父親もしくは年配の教師です。
反抗期前後を経て、そういった世代に対していい印象を持つ人は少ないでしょう。
中年とか、おっさんなんて言葉自体にマイナスのイメージがあることも含めて考えると分かりやすいと思います。
5歳児なんて、物の道理を理解しないガキでしょう。
10歳ぐらいなら、5歳くらいの弟もしくは妹がいて、勉強の邪魔になるなんてこともザラ。
そういうのを経験している子が、5歳児をカッコいいと思えるわけがない。
というわけで、第一印象でいきなり損してます。
女性読者も中年or幼稚園児(相当の年齢)ではね。いわゆるやおい系の人も5歳児では妄想しづらいでしょう(笑)
あと働きもせずに酒飲んでる(第一話後半)ニッパーとかも駄目人間まっしぐらですし。
現場主義のゲンバー大王……ある種のダジャレですが、ここまで悪印象が重なるとこの駄洒落も幼稚に思えて仕方ないかもしれません。
女性キャラはこのジャンルでは重要性は高くありませんが、主人公(感情移入の対象。この場合、主にバル、あるいはニッパー)に対して非常に偉そうなのが反感を買った可能性はあります。あまり可愛げがないといえばそうなので、敬遠されたかも。
少なくともP2のアキラみたいに話題を振りまいてはいませんでしたね。
博士番長も(前半:故人の部分)もどう扱っていいのか分からないでしょう。ちなみに博士も番長も今の子供にはマイナスイメージの方が強そうな単語です。
ちなみに後半のドカルト=ドリルに関しては、打ち切り決定後に決まった設定っぽいのでスルー。

2.重機
この漫画のキモ。重機人間ユンボルとロボットな重機=アースムーバー。
ユンボルはともかく、アースムーバーが何の説明もなく登場し、土木工事にも戦闘にも使われている世界観に読者を放り込むのは無茶です。
そもそもアースムーバーなんて単語自体、5話辺りが初出だったはず。ショべりウス3世をそういったのが最初。
汎用人型重機があるのがおかしいとは言いません。悪路走破に向く、アタッチメント次第では従来の重機を凌ぐ高度な工事が可能、重機を戦闘にも使うので対重機戦闘用の重機なんてものもあって当然だがそれは土木工事に向かない。それを両立させたのがEMだ、などなど、いくらでも理由は想像可能です。
だがアレを重機と呼ぶことに突っ込みを入れてくれ。
現実世界に存在する重機がないのも気にかかるところ。
タダでさえ、最近ナマで重機を見る機会ってないんですから、まずは重機のカッコよさから出さなきゃいけなかったんです。
そこからEMなりユンボルのカッコよさに派生していかなきゃいかなかったんです。
ぶっちゃけユンボル工法に使われてる用語も、ほとんどが分からない単語だと思います。
そもそもユンボが油圧式ショベルの名前だってこと自体知らない人も多いんじゃないでしょうか。
連載中にやってたこち亀の重機の話見て、初めてこち亀が続いててよかったと思ったくらいですよ。
つまり、子供にも大人にも重機の魅力そのものが伝わらなかったので、
重機人間やアースムーバーの魅力なんて伝わりようがないんですね。
アースムーバーの絵や変形したテツグンテの絵がごちゃごちゃしてて、
一見でその全貌を掴みにくい=デフォルメの不足も理由としては挙げられるでしょう。
以前の武井氏のエキゾチックカーの読みきりは、基本的にスーパーカーに興味ないにもかかわらず、
あの漫画の中においては魅力を感じることもできたので、
武井氏の力不足ではなく、このポイント最大の原因は読者の知識を見誤ったと思われます。

3.世界およびストーリー
この世界そのものは分かりにくくはないですね。
大災害からの復興中。それで各国の軍で土木工事をする必要性があり、
重機の開発改良をし続けた結果ロボットっぽい重機とか出てる世界なわけです。
ただ、暗い。特に1,2話の舞台になったバーラック。「沢山なんじゃよ」とか。
物語序盤の主人公に対する拒絶は、世界に慣れない読者に対しては作品世界に対する嫌悪感を招きます。
俗に言うカタルシスの不足ですね。
ユンボルの場合、ボリングぶっ飛ばしても村人の態度が変わるわけでもなし(というか再登場しない)
バーラックは結局水害に見舞われ、姫とは再会できたがニッパー以外の仲間は死んだまま。
いわゆる鬱作品一歩手前では?
主人公に優しい世界を作れ、とまでは言いませんが、
もう少し小さな救いをちりばめてもよかったんじゃないでしょうか。

○まとめ
結局のところ、
○外見がパラ見でにカッコいいとは言えない主人公達
○読者の日常から縁遠い重機をさらに発展させたオリジナル概念をクッションなしに出した
○読んでいて楽しさを感じにくい序盤のストーリー展開
などが、一話目を読んだ読者に「読んでて気持ちいい」=「数ページ読んだだけで続きを読みたくなる」牽引力を持たなかった。
つまりツカミがOKじゃなかったわけです。
そうやって読者の獲得に失敗した結果が10週での打ち切りだったのでしょう。
もし武井氏が今後もジャンプで連載をするのであれば、序盤だけでも読者に親切に、読んでて気持ちよくなるような展開になることを祈るばかりです。
少しくらい独特のノリを抑えたところで、武井氏の漫画の面白さが損なわれるとは思えませんから。
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by yasutohb | 2007-03-18 23:33 | 漫画


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